通常内視鏡観察によるsm癌の特徴的所見
(所見が重複していることが多い)
1. 非対称形(asymmetry)
良性腺腫では半球状の隆起を形成することが多く、病変の左右で対称形を示すことが多いが、大腸sm癌ではいびつな非対称形を示すことが多い。

2. 陥凹形成 (depression)
大腸sm癌は、隆起性病変のなかに陥凹を形成することがあり陥凹に一致して無構造な面を伴う場合はsm癌の可能性がきわめて高い。

3. 砂粒状表面 (sandy and rugged surface)
良性腺腫や過形成性ポリープでは表面に光沢があるのに対し、sm癌では表面の光沢が失われざらざらした印象をうける。

4. 内視鏡的硬さ(solid impression)
病変の形態の一部または全体に陥凹や直線化した部分、小結節などを認め、病変の丸さがとれ角張った硬さを示す所見です。
また、腫瘍細胞が密に重なりあっているため、充実感(緊満感)のある印象をうけます。

5. sm癌の露出 (outcrop of invasive carcinoma)
病変の表面に無構造の所見が面として認められる場合、癌の粘膜病変が消失し、sm層へ浸潤している部分と同じ癌層が表面に露出している場合が多い。

6. 陥凹内隆起 (protuberance in depression)
陥凹性病変の中に、癌による厚みを持った隆起を認めるときはsmにmassiveに浸潤している可能性が極めて高いと推定できます。

大腸sm癌の場合、通常内視鏡では以上の所見が病変に重複して認められることが多く、特徴的な所見が重複していればsm癌と診断することは比較的容易です。sm浸潤癌のうち上記の所見のいくつかがそろっていればsm2以深の深達度である証拠になり、診断に際し、有力な診断指針になります。
典型的なsm深部浸潤癌ではsm層に癌組織が1000ミクロン以上massive invasionしていることが多く、外科的腸切除の適応と診断することが可能です。まず、通常内視鏡にて大腸早期癌の形態と表面構造の所見による深達度診断を行い、必要が生じればさらに拡大内視鏡・注腸X-P・超音波内視鏡を用いて深達度診断の根拠となる情報を集めて総合的に診断するのが望ましいと考えます。